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東京・両国に位置する、自社拠点としてのシェアスタジオ兼イベントスペース。20世紀前半より「住工混在」の街として歴史を紡いできたこの地域は、近年のマンション開発にともない姿を変え、歴史ある工場は影の存在となりつつある。しかし、都心から消えゆく生産の場は、単なる消費と労働の場へと変わりつつある現代都市において、個々の主体性を取り戻すための重要な機能を有している。そこで、かつて町工場としての機能をもっていたテナントをスタジオとして改修し活用しつつ、地域の拠点として近隣の工場との繋がりを広げ、実際的なモノや知見をため込み発信する倉庫(WARE-HOUSE)として街に開かれた場所に育てていくことを目指している。
建物オーナーの中村仲製作所が製作した巨大なスチール建具は、作品展示やポップアップの什器、ミーティング用スクリーンなど、状況に応じて多彩に機能する。空間の奥にはキッチンや個室が配置されており、このスチール建具を開閉することで、手前のスタジオと空間を仕切ったり、一体化させたりして柔軟に活用ができる。また、空間中央の卓球台は、この場所を街の公園のように使いたいという思いから、オーナーがもともと所有していたものを利用した。日常的には作業台や打ち合わせテーブルとして使われ、イベント時には食事や酒が並び、ときには商品の陳列台にもなる。用途を固定しないこの卓球台は、人や活動が交差する場の中心として機能している。
1990年代初頭に建設された診療所併用住宅の2階の住居部分を、1階診療所に付随するリハビリテーションスペースへと改修するプロジェクト。既存住宅の内装は、手の込んだ造作家具やアーチ天井、廻り縁等の、装飾的な意匠が特徴の住宅であった。計画ではまず、リハビリスペースとして一体的に利用できる空間を確保するため、住宅を細かく区切っていた間仕切り壁を撤去し、見通しの良い開放的なワンルームへと再構成した。その際、間仕切り壁の撤去によって現れた既存の造作家具は、元の位置に残したまま機能に応じてリメイクした。玄関収納は受付へ、台所とダイニングの間のカウンターは手洗いへと転用している。こうして壁から解放された家具は、空間の中に島状の要素として残り、「受付」「マットスペース」「ベッドスペース」「スタッフスペース」をゆるやかに分節しながら、各領域の性格を形づくっている。このようにして生まれた各領域の輪郭を示すため、既存住宅に見られた廻り縁や人工大理石の腰壁を再解釈し、新設部分を領域ごとに塗り分けた。これにより、ワンルームの連続性を保ちながらも機能ごとの領域性を定義し、住宅空間に備わっていた身体的なスケール感を継承している。こうした操作を通して、既存住宅に残された家具や意匠を読み替えることで、リハビリテーションスペースに求められる機能を獲得しながらも、住宅が本来持っていた親密なスケール感や居場所の感覚を継承することを目指した。
2022-2025年の間、東京拠点だった馬喰町のスペース。目的より先に場を作り、場の用途をあえて定めず、「途中」の空間とした。会社として東京の街やコミュニティ、プロジェクトとの接点が明確化するまで有機的にシェアメンバーやその仲間たちとの交流が生まれる場として活用し、シェアメンバーにより段階的に施工・整備。普段はシェアオフィスとして活用しながら、作家によるインスタレーションや、barイベント、サッカー観戦などを不定期で行った結果、シェアメンバーによる協働プロジェクトやサッカーチームが発足した。ここで生まれたコミュニティやプロジェクトを基盤に、東京のモノづくり現場と共創するスタジオ「WAREHOUSE」を両国に立ち上げ、拠点を移した。
敷地は、川を境に市街地と隣接する市街化調整区域にある。桜並木が連なる川沿いと、敷地を囲むように広がる畑は、近隣住民の日常的な散策路として親しまれている。
診療所併用住宅として90年代初頭に建設されたRC造の既存建物は、シンメトリーの立面や、高さ10mの看板塔、特注のタイルが印象的なポーチなど、街のアイコンとなりうる特徴的な意匠を備えている一方で、周辺に対しては閉鎖的な構えとなっていた。この建物を新たなクリニックへと改修するにあたり、既存の可能性を再発見しつつ、周辺の風景や人々の営みと呼応する、街に開かれた居場所へと再編することを目指した。
具体的には、既存外壁の一部を解体し、建物の前面と背面に新たな開口を設け、西側の川に面した外構から待合を経て、東側のひまわり畑や電車が走る風景へと、視線・風・光が通り抜ける軸線を通した。外構には周辺と連続する植栽と、待ち時間や散歩中に腰掛けられるベンチを設け、入口は間口を広げつつ内側にセットバックすることで内外の境界を和らげている。そして、入口から奥に広がるのどかな風景まで視線を導くように、待合スペースの壁面を緩やかに湾曲させた。軸上の待合スペースは、南側のリハビリテーション部門と北側の診察・受付・処置部門を機能的に分節しながらも全体を緩やかに繋ぐ役割を果たし、スタッフが全体を見通すことができる開放的な平面計画となっている。
素材選定においては、既存との調和を図りながら、ポーチから内部へと連続する木天井や、内外で納まりと色を統一したスチール造作、一枚ごとに表情の異なるタイル、各素材の色を抽出して染め上げたカーテンなどを用いて、多様な質感が利用者の緊張を解きほぐし、リラックスした振舞いを促している。
このように、単なる機能更新にとどまらず、既存建物と周辺環境を丁寧に結び直すことを通じて、街に開いたクリニックのあり方を提示した。
この小児科クリニックは、総合病院を運営する施主が、地域全体により包括的で身近な医療サービスを提供することを目指し、既存病院周辺に複数のクリニックを展開するという構想の一環として計画された。そこで目指される施設のあり方は、単なる診療の場には留まらない。高齢者や若年層の孤立を防ぎ、地域コミュニティやライフラインへの接点となるようなクリニックの構築である。
このような地域に開かれたクリニックを実現するにあたり、カフェやコミュニティスペースなどを併設する事例はあるものの、この小児科クリニックをはじめとした都市部のクリニックでは、求められる診療機能を優先すると余剰のスペースを確保することが難しい。そこで、従来のクリニックの要素そのものを見直し、その配置や構成を工夫することで、地域との関わりを生み出せないか試行した。
そのようにして設計された内装は、室内にもう一つの建築を立ち上げたような構成となっている。中央の大きな屋根のまわりには、外と内の間のような空間が広がり、まちとのつながりを感じられる雰囲気をつくり出している。軒先高さを低く抑えたこの屋根は、来院時に不安を抱えがちな子どもたちにとっても落ち着けるスケール感を生み出すと共に、外の道からも目に入ることで、インテリアでありながらまちの風景の一部となる。こうして街中から段階的にクリニックの中へ入っていくアプロ―チが、子どもたちの緊張感をやわらげる親密な空間となる。
屋根の下には、待合や受付に加えて、通常は裏側に設けるスタッフスペースも建物の前面に配置し、診察室の背後に来院者用動線を設け、まちを歩くような回遊性を持たせた。軒先の受付には、来院者が腰をかけて気軽に相談や世間話ができる余白があり、スタッフスペースの周囲では自然な対話や気遣いが生まれることを期待した。
ファッション・カルチャー・アート分野のxR(VR/AR/MR)の実験的プロジェクト/コミュニティであるNEWVIEWが、第3回 NEWVIEW AWARDS 2020から新たにAR作品を募集するにあたり、参加作家へのインスピレーションとなるAR作品制作のキュレーションを行った。選択によりコンテンツが変わる作品から、サイトスペシフィックな実空間をベースとした作品、音楽とダンスなど時間の概念が組み込まれた作品、指示書による体験型の作品にARを組み込むものなど、現代美術・カルチャーなど異なるバックグラウンドを持った4チームによるAR作品により、ARという新しい技術を使った作品制作の可能性を幅広く提示した。
この計画プロジェクトは既存のコンビニを内科と婦人科のクリニックに転用する計画である。
この敷地は工業地域に位置し、周囲には大規模な工場や倉庫、ショッピングモール、公営住宅、野球場などが、それぞれ広大な敷地単位で配置されている。地域の風景は、こうした施設とそれを区画する塀、そして形式的に添えられた植栽によってかたちづくられた、単調な様相が連続している。一方で、近隣の学校や住人などの徒歩や自転車での移動が多く見られ、地域の人々にも配慮した居場所を設けることが求められる。
本計画では、こうした風景を否定するのではなく肯定的に受け止めながら、人間的なスケールでの設計を試みた。地域に広がる塀や植栽といった要素を、ある種記号的に引用し、それらを敷地内に取り込むことで、本来区画を分ける役割を果たしていたこれらの要素が、むしろ人を敷地内に呼び込み、滞留する場所の契機となるよう設計している。
既存のコンビニ建物には基本的に手を加えず、内外を分ける境界線としてのみ扱い、広大な敷地に配置された建物ではなく、街の風景や人々の日常に自然と接続するような、道を通り抜ける体験をそのままに立ち寄れるクリニックを目指す。
京都市中心部に位置する路地奥の長屋を、自社運営のセレクトショップへと改修するプロジェクト。計画地は接道義務を満たさない再建築不可の物件であり、都市開発の波から取り残された、経済合理性の周縁にある場所である。見過ごされてしまいそうな建物の隙間から細い路地を抜けてたどり着くこの環境は、都市の喧騒や更新から隔てられ、結果として残されてきた。本計画では、この特異な立地を手がかりに、京都という都市に対する典型的なイメージから距離を置き、日本―海外、過去―未来といった複数の文脈が交差する場としての店舗を構想した。
まず、今回の改修では、開口部と什器の挿入を除き、既存への介入は最小限に留め、土壁や古材の表情をそのまま、あるいは一部表面の再仕上げのみで引き継いでいる。この過去の時間を内包する既存の木軸に対し、商品ディスプレイを兼ねた可変性のあるスチールフレームを重ね合わせ、建築と什器の境界を横断する新たな構成要素として挿入した。フレームは商品レイアウトの更新を支えると同時に、空間全体を貫く骨格として機能している。 開口部は、保存されてきた路地奥の環境を内部へと引き込むように新設した。1階では、北側の路地と、かつて水路であった東側の市有地に向けて引き違い戸を設け、滞留しがちな空気に風を通している。2階には大判のフィックス窓を設け、商品越しに瓦屋根や空への抜けを取り込むことで、路地奥に残された環境そのものを店舗体験の一部としている。
このように、場所に蓄積された時間と更新され続ける活動の在り方を再考することで、京都という変化し続ける都市の固有性と、その継承のあり方を探った。