LeMonみんなのクリニック市川

かつて診療所併用住宅として建てられたRC造の既存建物を、街に開かれたクリニックへと再編した。 既存外壁の一部を解体し、前面の大柏川から裏手のひまわり畑まで、視線・風・光が通り抜けるような待合兼コミュニティスペースを計画。外構にはベンチや植栽を配し、地域住民が気軽に立ち寄れる地域に開かれた居場所を目指した。

敷地は、団地や畑が点在する市街化調整区域に位置し、隣接する大柏川沿いには桜並木が連なっている。川沿いには豊かな生態系が広がり、鳥や魚を観察しながら散策を楽しむ高齢者の姿が日常的に見受けられる。道ですれ違った人と自然に立ち話を始めるような、緩やかな時間が流れる風景には、地域に根ざしたコミュニケーションのありようが感じられる。
かつて診療所併用住宅として利用されていたRC造の既存建物には、特注タイルで構成されたファサードや、階段状の付柱が象徴的な玄関ポーチ、建物中央に設けられた天窓など、診療所として建てられた当時の特徴的な意匠を備えている一方で、周囲の環境に対しては閉鎖的な構えとなっていた。そこで本計画では、周辺の風景や人々の営みに呼応しながら、既存建物の可能性を再発見できるような街に開かれたクリニックへと再編することを目指した。
既存外壁の一部を解体し、建物の前面と背面の両側に新たな開口を設けることで、大柏川沿いのアプローチから裏手のひまわり畑まで、視線・風・光が通り抜けるような待合兼コミュニティスペースを計画した。待合を軸に、南側にリハビリスペース、北側に診察室・処置室を配置し、機能を分節しながらも、一体的な空間構成を実現している。
また、待合に沿って緩やかに湾曲する壁によって空間に奥行きを生み出し、奥に広がるひまわり畑を切り取るように開口を設けた。医療施設のもつべき公共性を考え、地域住民が気軽に立ち寄れる場として、外構には植栽やベンチを配し、大柏川沿いの風景とつながるような空間を設けることで、街に開かれた居場所を形成している。
タイルなど既存のマテリアルの存在感を尊重しつつ、新たに挿入する素材には、全体にデザインとしての統一感をもたらすよりも、個々の場所に応じて手仕事ゆえの揺らぎがあるような素材を選定・制作し、利用者のリラックスしたふるまいや自然なコミュニケーションを促すことを意図した。具体的には、外部から内部へと連続する木天井や、ベンチ・手すり・診察室の建具枠など、屋内外に共通する仕上げを施したスチールの造作、一枚ごとに表情の異なるタイル、他のマテリアルの色味を抽出して染め上げたカーテンなど、多様な質感の要素を組み合わせている。
本プロジェクトでは、単なる診療機能にとどまらず、民間が担う公共的な場の在り方を模索し、既存建物と周辺環境を丁寧に結び直すことを通じて、街の施設としてのクリニックのあり方を提示した。

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LeMonみんなのクリニック市川

かつて診療所併用住宅として建てられたRC造の既存建物を、街に開かれたクリニックへと再編した。 既存外壁の一部を解体し、前面の大柏川から裏手のひまわり畑まで、視線・風・光が通り抜けるような待合兼コミュニティスペースを計画。外構にはベンチや植栽を配し、地域住民が気軽に立ち寄れる地域に開かれた居場所を目指した。

敷地は、団地や畑が点在する市街化調整区域に位置し、隣接する大柏川沿いには桜並木が連なっている。川沿いには豊かな生態系が広がり、鳥や魚を観察しながら散策を楽しむ高齢者の姿が日常的に見受けられる。道ですれ違った人と自然に立ち話を始めるような、緩やかな時間が流れる風景には、地域に根ざしたコミュニケーションのありようが感じられる。
かつて診療所併用住宅として利用されていたRC造の既存建物には、特注タイルで構成されたファサードや、階段状の付柱が象徴的な玄関ポーチ、建物中央に設けられた天窓など、診療所として建てられた当時の特徴的な意匠を備えている一方で、周囲の環境に対しては閉鎖的な構えとなっていた。そこで本計画では、周辺の風景や人々の営みに呼応しながら、既存建物の可能性を再発見できるような街に開かれたクリニックへと再編することを目指した。
既存外壁の一部を解体し、建物の前面と背面の両側に新たな開口を設けることで、大柏川沿いのアプローチから裏手のひまわり畑まで、視線・風・光が通り抜けるような待合兼コミュニティスペースを計画した。待合を軸に、南側にリハビリスペース、北側に診察室・処置室を配置し、機能を分節しながらも、一体的な空間構成を実現している。
また、待合に沿って緩やかに湾曲する壁によって空間に奥行きを生み出し、奥に広がるひまわり畑を切り取るように開口を設けた。医療施設のもつべき公共性を考え、地域住民が気軽に立ち寄れる場として、外構には植栽やベンチを配し、大柏川沿いの風景とつながるような空間を設けることで、街に開かれた居場所を形成している。
タイルなど既存のマテリアルの存在感を尊重しつつ、新たに挿入する素材には、全体にデザインとしての統一感をもたらすよりも、個々の場所に応じて手仕事ゆえの揺らぎがあるような素材を選定・制作し、利用者のリラックスしたふるまいや自然なコミュニケーションを促すことを意図した。具体的には、外部から内部へと連続する木天井や、ベンチ・手すり・診察室の建具枠など、屋内外に共通する仕上げを施したスチールの造作、一枚ごとに表情の異なるタイル、他のマテリアルの色味を抽出して染め上げたカーテンなど、多様な質感の要素を組み合わせている。
本プロジェクトでは、単なる診療機能にとどまらず、民間が担う公共的な場の在り方を模索し、既存建物と周辺環境を丁寧に結び直すことを通じて、街の施設としてのクリニックのあり方を提示した。

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2025.05
Location:
Chiba, Japan
Client:
Jikokai Medical Corporation
Status:
Built
Program:
Clinic
Team

Direction: Hiroaki Suzuki
Design: Mire Kan, Yoshifumi Hashimoto,
Yusaku Kimura

Collaborators

Construction: Cabbage Truck
Lighting Design: modulex
Environmetal Design: Masamichi Oura
Signage Design: Misako Taoka/REFLECTA,Inc
Curtain  Design: some/to
Furniture: Inoueindustries
Steel: Nakamuranaka
Tile: MIZUNO SEITOEN LAB.
Ceiling Wood Paneling: Tanaka Sawmill Ltd.
Landscape Design: EN LANDSCAPE DESIGN
Photographer: Akira Nakamura